ばらに憑かれて2

ばらに憑かれて2
今年初めて花を咲かせたバリエガータ ディ ボローニャというばらがある。
去年の春に15センチくらいの新苗にホームセンターで出くわした。白地にマゼンタの斑が入る複色の花の写真があまりに魅力的だった。苗が幼いので1年待たないと咲かないことはわかっていたけれど、どうしても花が見たかったので待つことにした。春と秋、二度咲くばらが多いけれど、このばらは年に一度、春にしか咲かない。それで今年は待った甲斐あって壁に沿って伸びたつる状の枝にたくさん蕾をつけた。花によって白地に少しマゼンタが入るものと二色が同じくらいに混ざっているのもある。咲く度に表情の違う花のひとつひとつ、どうしてこうもいろいろに違って咲くのか。偶然にあらわれるその配色の理由のわからなさに惹かれる。1909年イタリア作出のこのばらが、100年以上のちに極東の島国のとある民家の軒先で咲かされることを作者は想像できただろうか。オールドローズの古典的な香りがする。
ばらは作者不明のものあるけれど、いつどこで誰によって交配されたかがわかるところがおもしろい。
例えば今年植えたばかりのコーネリアは、1925年にイギリスの牧師ベンバートンという人によって作られた。小さい花が房になって咲く。ベンバートンは麝香、ムスクの香りがするばらを生涯追い求めた人だったそうで、まだ苗が小さいので2輪しか花を見ていないけれど、確かにほのかなムスク様の香りがあった。
ベンバートンはばらの蒐集家でもあって、ばらに心酔し、ばら好きが高じて「僕の心には花嫁を受け入れる余地がなかった」人らしい。コーネリアを作出した1925年に亡くなっているので、この花はばらに全精力を注いだ人の最後のばらということになる。そうか最後のばらかと思いながら水をやる。コーネリアは育つのが早いようでどんどん新しい芽を伸ばしている。生涯のこだわりだったというムスクが漂うくらい満開に咲いたら、ベンバートンのユーレイが香りに誘われて花見に来るかも知れない。

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