酒粕心身

sakekasu

板状にしていない地酒のずっしりした、いかにも絞りたてに見える酒粕が袋で売られているのに出くわすと、まだ家にあるのに思わず買いそうになってしまう。お酒の風味は好きなのにアルコールには弱いので飲めないぶんの日本酒欲は酒粕に注がれる。それに酒粕のような主目的を得るために出た副産物やカステラ切れ端、割れせんのようなどこか欠けていたり端っこだったり残ってしまうものにどうも心惹かれてしまう。
買って帰ると一度鍋に全部入れて少しお湯を入れてふやかし、弱火にかけて柔らかくする。やりすぎると香りもとびそうなのでゆるい味噌のようになって少しアルコールがとんだくらいでやめて、タッパーに入れて冷蔵庫に常備する。こうしておくと使い勝手がいいし、甘酒のようにして飲んでも酔わない。酒粕で作る甘酒は気分により濃い方がいいときとあっさりしていてほしいときがあって、好きな量の酒粕ときび砂糖を湯のみに入れ、沸かしたお湯を注いで混ぜる。そこに少しだけ牛乳を足す。冬場はだいたい毎日これを飲んでいる。日本酒は肌にいいと聞くけれど、酒粕のおかげなのか真冬も肌が乾燥せず調子がいい。栄養豊富な食べ物だから肌にもいい影響をもたらすはずと以前試したことがある。
珈琲ドリッパーにフィルターをセットして、そこに酒粕を適量いれて精製水を注いで一晩くらい置いてゆっくり漉してそれを化粧水として使ってみた。すこし白く濁っていて酒粕の甘いにおいがする。使っているあいだ劇的に肌が白くなりましたということもなかったけれど、それとスクワランオイルで十分保湿できたので案外使える化粧水だった。ただ保存料を使わないと10日ほどしか日持ちがしない。こまめに作るのが面倒になり、ちょうどその頃に酒粕の旬も終わったのでやめた。
粕汁には家によっていろんな塩梅があるだろうけれど、昆布と煮干しでしっかり出汁をとっておけば、鮭や豚肉をいれなくても大根、人参、ごぼう、油揚げさえ入っていればいいと思う。粕汁にはこんにゃくが入っていることが多いけれど、汁物に入っているこんにゃくにあまり興味がないので省いている。
カレー同様翌日の方がおいしいので鍋いっぱいに作っておく。ねぎかみつば、七味もいいけど胡椒も合う。酒粕を使ってクラッカーを作ってみたら、作った本人すらチーズだと信じて疑わないチーズ味だった。ピザ生地を作るときに混ぜ込むと発酵した風味が加わるのでイーストを使わなくてもベーキングパウダーでおいしくできる。これは伊丹にある酒蔵に併設されたレストランの酒粕ピザからあやかった知恵。
もうひとつ簡単で好きなのは食パンに酒粕を塗ってトースターで焼き、それにはちみつを垂らした酒粕トースト。マーマレードでもいいし、輪切りにしたドライ無花果をのせると朝から一気にお洒落な感じになる。そして気分だけほろ酔いになって仕事に向かう。

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