その頃3歳下の妹はまだ産まれていなかったから、これは3歳より前の記憶ということになる。私は寝つきが悪かった。 当時住んでいたのは社宅のアパートの二階で、南側の青いカーペットを敷いた六畳間に布団を敷いて父私母の並びで川の字続きを読む “寝つきの悪い子供の思いで”
投稿者アーカイブ:mimacul
トレーシングペーパー ≒ 2
先週離婚のことについて書いたらいくつかの反応を受け取ったりした。 もちろんあそこに書いていることを読んでいくほど淡々と別れたのではないし、結論に至るまでに夫婦をやり直すために持てる愛情を全弾投げて試みた時期が当然あった。続きを読む “トレーシングペーパー ≒ 2”
トレーシングペーパー ≒ 離婚届
昨年、人生のなかでしないだろうと踏んでいた離婚というものを、した。 一度は添い遂げる気持ちで一緒になった相手と過ごした10年あまりの時間を思えば、決断に至り実行するまでには感情のぬかるみに足を取られながら気の遠くなる振れ続きを読む “トレーシングペーパー ≒ 離婚届”
白粉白書
そういえばいつからかだいたい毎日化粧をするようになった。することが普通になってからはしないまま外に出ると目鼻を描き忘れて家を出てきた心地がして落ち着かない。 もっと若かったときはそういう、化粧するの当然みたいな出来上がっ続きを読む “白粉白書”
酒粕心身
板状にしていない地酒のずっしりした、いかにも絞りたてに見える酒粕が袋で売られているのに出くわすと、まだ家にあるのに思わず買いそうになってしまう。お酒の風味は好きなのにアルコールには弱いので飲めないぶんの日本酒欲は酒粕に注続きを読む “酒粕心身”
赤飯はじまり
コンビニでおにぎりを買うとき選んでしまうのはだんとつに赤飯で、けれど思い返すと赤飯は、何かのお祝い事の折にパックに入って南天の葉が添えてあって、握られているものではそういえばなかった。 ハレの日の食べ物だったはずがコンビ続きを読む “赤飯はじまり”
正月召喚
引っ越した家の玄関ドアには駅前の平和堂で買った小さい正月飾りがぶら下がっている。アパートはどこも同じ玄関で暮らしの表情が見えにくいし、正月も積極的に呼ばないとちゃんと正月の顔をして来ない気がしてくる。 妹が学生の頃バイト続きを読む “正月召喚”
電気の口
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火の手
夜、消防車が立て続けに4台くらい近くを通ってわりと大きな火事と思っていたら、窓の外が赤いランプでチカチカして人のざわめきが聞こえ出した。まさか引っ越したばかりのこのマンションの一階にある飲み屋からじゃないだろうなと窓を開続きを読む “火の手”
巣づくり
しばらく住まれていなかった家の、何の、というでもない住人不在のにおいのする部屋。窓を開け放って澱んでいた空気を動かす。仮死状態だった部屋が少しずつ息を吹き返して蘇生する。 床を拭く。きれいなように見えて雑巾を裏返してみる続きを読む “巣づくり”