堰を切ったように 積年の 赤裸々が 腫れ上がり 本日は 晴天なり おお サンショウウオの 表面を旅し 荼毘にふしても 焼けのこる 生やけの どっちつかずな手足が逆に なまめかしいね 仮死の 歌をうたって 飢餓の 都に雨を続きを読む “呼吸”
投稿者アーカイブ:mimacul
11月素描
寒さが増すほど布団は地球とは別の引力を帯び目蓋は重く、ガス代と電気代はゆるやかに上昇し、季節は冬へと移行する。 土鍋とパネルヒーターをメルカリで買った。土鍋の方には出品者から直筆のお礼の手紙が添えられていた。大阪で50年続きを読む “11月素描”
金曜日
輪郭をうるませて 硬度を手放す鉱物の 恍惚に乗じて にじんだ指紋をかき混ぜる 認証できない指先で 誰でもないひとに触れ 不定形な肌の合間 足をとられているうちに 水晶体がこぼれ落ち 同時に世界は散乱し 魚眼や魚卵のつぶつ続きを読む “金曜日”
あずかり猫すず
友達の猫をあずかっている。 演劇の海外公演で飼い主が3週間留守のあいだうちにいる毛足の長い女の子。すずという。すずは長い毛のせいもあって手足が短く見え、しっぽも隙間用ほこり取りのような太さで、部屋を横切っていく姿は猫とい続きを読む “あずかり猫すず”
お隣りの
日曜日。台所にいたら隣の家のお風呂場から十数える声が聞こえてきた。十数えたらあがっていいというのは、今もやるのだなと思った。子供の体が湯船からあがる軽い音、そのあと大人の男がざばっとあがる音。夕方まだ6時前だから晩ご飯は続きを読む “お隣りの”
秋の夕食
あら炊きの 骨からほどける 身をはこぶ 箸の先端 ふるえるゼラチン 煮こごる夜に 空耳の 月光ソナタ あかあかや 身を乗り出して 骨からこぼれた 我が身のゆくえ 私も知らない 白く濁った 目の玉す続きを読む “秋の夕食”
『TrioA』 の痕跡
イヴォンヌ・レイナーというポストモダンダンスの振付家がいる。ポストモダンダンスというのは、1960年代にアメリカで起こったそれまでになかったダンスを創造しようとするムーヴメントで、例えば日常的な動きや、ダンスとして洗練さ続きを読む “『TrioA』 の痕跡”
疾走失踪
左膝が痒い。 地域の運動会があった。今年の春に引っ越した先の町内はわりと結束が固く、行事にも積極的で、引っ越しのご挨拶をした段階でまだ走れそうな年頃と見込まれ、秋に運動会があるからと期待されていた。 そしてその秋がやって続きを読む “疾走失踪”
水源
ものやひとになぜ愛着というものを感じるようになるのだろうか。 愛着は「わく」というけれど、わくというのは勇気がわく、疑問がわくなど、自ずと起こってくる心情をさすものだったり、水がわく、虫がわくなどの意図していないところか続きを読む “水源”
文体の歩き方
8割くらい翻訳サイトの力を借りながら英作文をしていると、この不自由な記号でしか疎通できないのかと思えてくる。 意味をもった文字配列である単語と単語をつらねてどうにか文章にする。けれどとても角張っていて、文章の伝えたい旨に続きを読む “文体の歩き方”