クロード モネがちょうど二番花を咲かせている。睡蓮を描いたモネの名が付いたばら。フランスのデルバール社が出している印象派の画家の名前をつけたペインターシリーズのひとつで、他にセザンヌ、ドガ、マチス、シャガール、ユトリロなどがある。どれも複数の色が混ざって咲く。特にモネが好きだったわけではなく、ホームセンターの隅でシーズンを過ぎて売れ残っていたのがモネだった。
そういうホームセンターで目にするさびしげな植物を時々買ってきてしまう。例えば母の日のギフト用に合わせて温室で咲かされたあじさいなどは、路地のものが咲く前に花を終えてしまう。母の日を過ぎて梅雨を待たずに色褪せて売れ残ったものは、半額で目立たないところに並べられている。買ってもその年にもう花は見られない。けれどそういう苗を買って植え替えてやると、あっという間に倍以上に育つ。そうして出会った八重咲きのあじさいがあって、売られているときはピンクだった。これを青に咲かせてみたいと青色あじさいの肥料をやりながら今年で3年目になる。なかなか真っ青にはならないけれど、去年赤みの強い京紫くらいだったのが、今年は青みがちの江戸紫くらいにはなった。
半値にしても売れ残ってしまった行き場のない苗を廃棄する場所がたぶんどこかにあるのだろうと思っていた。この前たまたま見に行った写真の展覧会で、そういう苗の墓場のような場所を撮った写真があった。土の山の斜面に赤や黄色が点々と、ひっくり返されたまま咲いていた。
安売りのモネはあまりしっかりした苗ではなかったけれど、今ではうちのばらのなかで一番勢いがある。桃色にイエローオレンジの絞りが入る。アニスの印象に桃のような穏やかな果実の香りがある。広い庭があったら一角にペインターシリーズをまとめて植えるのはどうかと想像したけれど、ただでさえ多色使いの画家を一カ所に集わせるとたぶんかなり騒々しい。