水気を含んだ内側は重たく
どこからか渾々と
涌くものを湛えて
中から流されるような足どりで
ひたひた歩いて人混みのなか
帰宅
冷たい床と足の接触
凍てるカーテンはなびかない
予感のような淡さより
やかんの底で力強く沸くものが
凍えた口に注がれるのを待っている
五徳の上で狐火は青白く
促されて渾々と
浸って蘇生した末端
ふやけた矛先
低温火傷は
水膨れになり破裂
膨れた水を頭から浴びて
マスカラ爛れた黒い目で
見返す結果になったとしても
何も恨んでなどいない
覆水から彫り出した覆面の
かえらない表情で
溢れるものがただ
乾いていくのを
眺めている