秋の日は

昼間半袖サンダル履きで家を出て、日が暮れてから自転車で走っていると、その格好ではもうあきらかに寒かった。秋だから葡萄色、と思って塗った足の指の紫は、冷えて血色の悪くなった足を過剰に演出していた。死人の足がペダルを漕いで、続きを読む “秋の日は”

釜ヶ崎の1時間

友人から釜ヶ崎にある立ち飲み屋で夜にライブとするという知らせをもらった。歌を聞きたかったので行くことにしたけれど、釜ヶ崎という場所には行ったことがなかった。写真や何かで読んだりした街のイメージしかなかったので、日が暮れた続きを読む “釜ヶ崎の1時間”

文字の体

こういう文章や詩を書いているけれど、正確には書いているのではなくて全部打っている。モニター越しにゴシック体に変換され、きちんと整えられた文字が並んでいくのを見ているのが気持ちいい。自分の筆跡を離れた言葉を眺めていられる距続きを読む “文字の体”

奇妙な果実

ビリー・ホリデイの歌のことについて書こうとしているのではないけれど、タイトルを奇妙な果実と決めたところでイントロが頭の中で流れ出す。 季節になってスーパーに無花果が並ぶようになった。数ある果物のなかでいちばん好きなものを続きを読む “奇妙な果実”

割れたチェロ・ソナタ第3番

お気に入りのパン屋が日常自転車移動範囲に数件ある。そのうちの一件はくるみパンが有名で、そのくるみパンには数日後にまた食べたくなる柔らかなものの中毒性があり、出先でお腹が空いたらしょっちゅうそれだけ買って自転車で走りながら続きを読む “割れたチェロ・ソナタ第3番”